ドバイ不動産の価格を調べ始めると、多くの方がまず戸惑うのが「数字が記事ごとにバラバラ」という点です。あるサイトは「1年で43%上昇」、別のサイトは「7%下落」、さらに別の記事では「ほぼ横ばい」。同じドバイの話のはずなのに、なぜここまで食い違うのでしょうか。
「ドバイの不動産って、結局いくらなの?」
「記事によって数字が違うのは、いったいなぜ?」
「日本円だと、いくらから買えるんだろう?」
こうした疑問を抱えたまま平均価格の一覧を眺めても、自分が買える不動産のイメージにはなかなか結びつきません。実は、その原因ははっきりしています。ドバイの「価格」として流通している数字には、性質のまったく違うものが何種類も混ざっているのです。
先に、この記事の結論をお伝えします。値上がり・値下がりを知りたいなら、見るべき数字は「平米単価(1㎡あたりの価格)」の一つだけです。ドバイ土地局(DLD)の公式データによれば、住宅アパートの平米単価は2007年から2024年にかけて約3倍になっています。取引額の増減や平均価格の上下は、この平米単価とは別の指標であり、混同すると判断を誤ります。
この記事を読むと、次の3つがわかるようになります。
- ドバイの「価格」を表す4種類の数字の違いと、どれを見ればよいかの判断軸
- DLD公式データに基づく、物件タイプ別・エリア別の価格水準と長期の推移
- 表示価格に上乗せされる費用や、円換算・為替の注意点まで含めた「総額」の考え方
情報は2026年7月時点のものです。数値はDLD(ドバイ土地局)の公式年次レポートなど、一次情報をもとに整理しています。それではまず、「いま、いくらなのか」の全体像から見ていきましょう。
ドバイ不動産の価格相場の全体像

はじめに、ドバイ不動産が「いま、どのくらいの水準なのか」を押さえておきましょう。ここで扱うのは購入価格(売買)の相場です。賃貸の家賃相場は本記事では扱いません。それでは価格相場の全体像を以下3つの視点で見ていきましょう。
アパートとヴィラで単価の水準が異なる
ドバイ不動産の価格水準は、DLD(ドバイ土地局:不動産登記を管轄するドバイ政府機関)が公表する平米単価(1㎡あたりの価格)で見るのが最も確かです。2024年の住宅用の平米単価は、アパートがAED19,138/㎡(AED=ディルハム:UAEの通貨)、ヴィラがAED14,617/㎡でした(DLD Annual Report 2024)。
1㎡あたりの単価だけでは総額のイメージがつかみにくいので、「広さ×単価」で試算してみましょう。たとえば80㎡のアパートなら、80×19,138=約153万AEDが目安になります。ただしこれはあくまで単価からの試算であり、実際の売買価格は立地・階数・仕様・築年数などによって大きく変動します。
意外に思われるかもしれませんが、1㎡あたりで見ると、アパートのほうがヴィラより単価が高くなっています。「ヴィラは高い」という印象は総額の話であって、単価では逆になる・この点は、後の推移の章で詳しく解説します。
住宅用と商業用でも単価は分かれる
単価は、住宅用か商業用かでも分かれます。2024年の商業用の平米単価は、商業ユニットがAED18,566/㎡、商業ヴィラがAED14,100/㎡でした(DLD Annual Report 2024)。
住宅用と商業用で単価帯は比較的近い一方、商業用は用途やテナント需要によって評価が変わりやすいという特徴があります。投資目的で検討する場合、住宅用と商業用のどちらを狙うかで、参照すべき数字そのものが変わる点に注意しましょう。
日本円に換算した価格の目安
日本円での目安も見ておきましょう。為替は日々動くため、円換算では「いつ時点のレートか」を必ず確認することが大切です。本記事では、2026年7月30日 00:02(UTC)時点の1AED=44.53円(https://www.exchangerate-api.com/)を基準に計算します。
先ほどの試算(80㎡のアパートで約153万AED)を円に換算すると、約6,800万円です。ただし、この円換算はあくまで基準日のレートによる目安にすぎません。為替が動けば、同じ物件でも日本円での負担額は変わります。円換算の落とし穴については、記事の後半で改めて整理します。
ドバイ不動産の価格を表す数字は一つではない

ここからが本記事の核心です。冒頭で触れたとおり、ドバイの「価格」をめぐっては「+43%」「▲7%」「▲1%」「+10%」といった数字が同時に流通しています。これらは互いに矛盾しているわけではありません。単に、それぞれが「違う数字」を指しているだけなのです。ドバイの価格として語られる数字には、大きく4種類あります。一つずつ見ていきましょう。
平米単価は面積あたりの値動きを示す
1つ目は平米単価(1㎡あたりの価格)です。面積の影響を取り除いた数字なので、物件の広さが変わっても比較でき、値動きを見るのに最も適しています。DLDが年次レポートで公表しているのも、この数字です。本記事で「価格が上がった・下がった」を語るときの唯一の根拠は、この平米単価です。
平均取引価格は売れた物件の構成で動く
2つ目は平均取引価格です。これは「その期間に売れた物件の平均額」を指します。注意したいのは、高額物件が多く売れれば平均は上がり、小型物件が多ければ下がるという点です。つまり、平米単価が上がっていても、平均取引価格は下がることがあり得ます。
実際、ある競合記事では「平均取引価格▲1%」と「平方フィート単価+10%」が同じ期間の数字として並記されていました。不動産ポータルのProperty Finderも、「平均はあなたに嘘をついている(Why ‘The Average’ is lying to you)」と題した記事で、平均価格だけを見る危うさを指摘しています。
売買金額の合計は市場の勢いを示す
3つ目は売買金額の合計(取引額)です。ここが最も誤解されやすいポイントです。取引額は「単価×面積×件数」で決まるため、件数が増えれば、単価が横ばいでも金額は伸びます。
つまり取引額の前年比は「売れ行きの勢い」を表すのであって、値上がり率ではありません。たとえば「オフプランが43.7%値上がりした」という書き方をよく見かけますが、これは誤りです。正しくは「オフプランの売買金額の合計が前年比で43.7%増えた(=売れ行きが伸びた)」という意味です。この点の詳細は、後の章で表とともに整理します。
価格指数は基準時点との比較を示す
4つ目は価格指数です。ドバイ土地局が公表する公式の価格指数は「Mo’asher(ムアシェル)」という名称です。
価格指数は、ある基準時点を100として、そこから何%変化したかを示すもので、金額そのものではありません。基準時点が違えば、同じ市場でも指数の値は変わります。なお、Mo’asherの具体的な指数値は一次情報の原文に確実な形で到達できていないため、本記事では数値を示さず、「指数とは何か」の説明にとどめます。
4種類の違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 取引額(売買金額の合計) | 平米単価(1㎡あたりの価格) |
|---|---|---|
| 何を表すか | その期間に売買された金額の合計 | 1㎡あたりいくらか |
| 何で動くか | 単価×面積×件数 | 単価のみ |
| 件数が増えると | 単価が横ばいでも金額は増える | 変わらない |
| 使ってよい表現 | 売れ行きの勢い/資金の集まり方 | 値上がり・値下がり |
結論はシンプルです。値上がり・値下がりを知りたいなら、見るべきは平米単価です。平均取引価格や取引額の増減は、市場の別の側面を表しているにすぎません。次章からは、この平米単価だけを使って、ドバイ不動産の価格がどう推移してきたかを見ていきます。
公式データで見るドバイの不動産価格の推移

ここからは、値動きを語れる唯一の指標である平米単価だけを使って、ドバイ不動産の価格がどう推移してきたかを見ていきます。数字の出典は、DLD(ドバイ土地局)が2025年10月28日に公開した「DLD Annual Report 2024」です。DLDの年次レポートは2024年版が最新で、2025年版はまだ公開されていません(次回は2026年10月前後の公開が見込まれます)。
なお、この章で用いる数値は、DLDが2007年からの時系列として公表している指標です。前章「価格相場の全体像」で示した住宅用の相場とは集計の対象がやや異なるため、同じ2024年でも数字が完全には一致しません。時系列の値動きを追う目的にはこの指標が適しているため、本章ではこちらを使います。
ここでは、価格の推移を5つの視点で読み解いていきます。
アパートの単価は長期で大きく上昇した
アパート(ユニット)の平米単価は、2007年のAED6,928/㎡から2024年のAED19,488/㎡へと、約17年で約3倍になりました(DLD Annual Report 2024)。ただし一本調子で上がってきたわけではありません。途中経過を追うと、次のように上下しています。
| 年 | アパート(ユニット)の平米単価 |
|---|---|
| 2007年 | AED6,928/㎡ |
| 2010年 | AED11,775/㎡ |
| 2012年 | 約AED10,700/㎡ |
| 2014年 | AED14,182/㎡ |
| 2015〜2020年 | AED13,500〜14,500/㎡で横ばい |
| 2021年 | AED14,719/㎡ |
| 2024年 | AED19,488/㎡ |
2010年にいったん上昇したあと2012年にかけて調整し、その後は長く横ばいが続き、2021年以降に再び大きく上昇した。これがアパート単価の大きな流れです。とくに直近の伸びは大きく、2021年のAED14,719/㎡から2024年のAED19,488/㎡まで、3年で約32%上昇しています。
ヴィラの単価は底値から急回復した
一方、ヴィラの平米単価は、2007年のAED3,598/㎡から2024年のAED14,605/㎡へと推移しています(DLD Annual Report 2024)。
| 年 | ヴィラの平米単価 |
|---|---|
| 2007年 | AED3,598/㎡ |
| 2010年 | 約AED5,500/㎡ |
| 2016年 | AED9,134/㎡ |
| 2020年 | 約AED7,575/㎡(底) |
| 2024年 | AED14,605/㎡ |
注目すべきは、2020年に底を打ってからの回復の急さです。2020年の約AED7,575/㎡から2024年のAED14,605/㎡まで、約93%上昇しています。アパートとは値動きの形が異なる点を押さえておきましょう。
アパートとヴィラの価格差は縮まった
アパートとヴィラを比べると、両者の単価差は年々縮まってきました。2007年時点では、アパートの平米単価はヴィラより約92%高い水準でした。ところが2024年には、その差は約33%まで縮小しています(DLD Annual Report 2024)。
ここで混同しやすいのが「総額」と「単価」の違いです。1軒あたりの総額で見ればヴィラのほうが高いのが一般的ですが、1㎡あたりの単価で見るとアパートのほうが高い——この逆転は、読者が最も陥りやすい誤解の一つです。「広い=単価も高い」ではない、と覚えておきましょう。
過去の下落局面が価格サイクルを示す
平米単価の推移をたどると、ドバイ不動産には過去に少なくとも2度の調整局面があったことが読み取れます。1度目は2010年から2012年にかけて、2度目は2016年から2020年にかけてです。
ただし、ここから「次も必ず同じように下がる」と結論づけることはできません。あくまで「過去に価格が一方向へ動き続けたわけではない」という事実の確認です。
長期の方向は平米単価で、短期の振れは別の指標で見るこの使い分けが判断の助けになります。下落局面そのものを詳しく知りたい方は、市場動向を解説した記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/dubai-real-estate-market/
直近は買い手が選別する市場に移っている
DLDの年次データは2024年が最新のため、2026年の直近の動きは不動産ポータルのProperty Finder(確度は年次の公式データより一段下がります)の情報で補います。同社によると、2026年1月の売買はAED630億超と好調だった一方、3〜4月にかけては減速が見られました。ただし同社は、これを「市場崩壊の形ではない(That is not the shape of a market collapse)」と表現しています。
この情報はポータル事業者による直近の観測であり、公式の年次統計とは性質が異なる点に留意してください。全体としては、勢い一辺倒だった局面から、買い手が物件を選別する局面へと移りつつある、と読むのが妥当でしょう。
種類によって分かれるドバイ不動産の売れ行き

この章で扱うのは「売買された金額の合計(取引額)」であり、価格そのものではありません。前章までの平米単価とは別の指標だという点を、まず押さえてください。取引額を見ると、ドバイ不動産の「どこに資金が集まっているか」という売れ行きの勢いがわかります。
市場全体の勢いから見てみましょう。2024年の取引総額はAED760.99B(Bは10億AED)で、前年のAED632.13Bから+20.4%。
取引件数は約22.6万件で+36%、投資家数は約15.8万人で+41%と、いずれも大きく伸びました。ドバイ不動産に資金と関心が集まっている一年だったことがうかがえます。
ただし、これらはあくまで「売れ行き・注目度」を表す数字であって、価格が上がったことを直接示すものではありません。値動きそのものは、前章の平米単価で確認してください。
| 物件の種類 | 2024年 | 2023年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| アパート等ユニット | AED318.18B | AED231.88B | +37.2% |
| ヴィラ | AED126.32B | AED93.76B | +34.7% |
| ビル(一棟) | AED81.94B | AED53.40B | +53.5% |
| 土地 | AED234.56B | AED253.09B | ▲7.3% |
| 完成前(オフプラン) | AED230.61B | AED160.48B | +43.7% |
表を見ると、土地だけが前年比マイナスで、完成前(オフプラン)が最大の伸びを示しています。同じドバイ市場の中で、正反対のことが同時に起きているわけです。だからこそ、「ドバイの平均価格」という一つの数字では実態がつかめません。自分が検討している種類の数字を見ることが大切です。
なお、ここで示したのは売れ行き(金額の合計)であって、値上がり率ではありません。「完成前が43.7%」という数字は、オフプランの売買金額が前年より43.7%増えたという意味であり、「オフプランが43.7%値上がりした」という意味ではない点に、改めて注意してください。
2つ注記を添えます。1つは、DLDの年次レポートは2024年版が最新であること(直近の動きは前章のProperty Finder情報を参照)。もう1つは、「完成前(オフプラン)」は完成済み/完成前という別の軸による分類であり、上の4種類(アパート・ヴィラ・ビル・土地)と単純に足し合わせることはできない、という点です。オフプラン自体をより詳しく知りたい方は、オフプラン投資の記事をご覧ください。
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エリアで変わるドバイ不動産の価格水準

ドバイ不動産の価格は、エリアによっても大きく変わります。同じドバイでも、都心のブランド立地と内陸の新興エリアでは、街の雰囲気も、向いている人も、価格帯も別物です。ここでは代表的なエリアを取り上げ、それぞれの特徴と価格水準をあわせて見ていきましょう。
ここでは、代表的な4つのエリアを見ていきます。
ダウンタウン・ドバイ|都心のブランド立地
ドバイの都心にあたるのがダウンタウン・ドバイです。世界一の高さを誇るブルジュ・ハリファや大型商業施設のドバイモールを擁し、ビジネスや観光の中心が徒歩圏に集まります。「Address」「Armani」など世界的ブランドのレジデンスが立ち並び、ステータス性を重視する富裕層や海外投資家に人気の高いエリアです。
それだけに価格水準はドバイでも最高クラスで、1㎡あたりの単価は他エリアを大きく上回ります。国際的な知名度が高く資産価値が安定しやすいとされる一方、そのぶん必要な投資額は大きくなります。ブランド立地ならではの安定感を重視する人に向いたエリアです。
ドバイ・マリーナ|居住と投資のバランス型
人工運河沿いに高層住宅が立ち並ぶウォーターフロントが、ドバイ・マリーナです。レストランやショップが集まり、ジュメイラビーチへも徒歩圏という利便性から、外国人駐在員や若いプロフェッショナルに人気があります。
価格水準はダウンタウンより一段手頃で、住みやすさと貸しやすさのバランスに優れる点が特徴です。自分で住むにも、貸し出して運用するにも検討しやすく、はじめての一戸として組み込みやすいエリアといえます。
都心の最高級までは手が届かないものの、生活の利便性と資産性の両方をほどよく取りたい。そんな検討層に合った価格帯です。
パーム・ジュメイラ|別格の超高級リゾート
ヤシの木の形をした人工島が、パーム・ジュメイラです。ドバイ随一の超高級住宅地であり、高級ヴィラと高層コンドミニアムが並ぶリゾートエリアでもあります。多くの物件がプライベートビーチやオーシャンビューを備え、世界中の富裕層がセカンドホームとして所有することで知られます。
価格は群を抜いて高く、Property Finderの2026年予測では、コミュニティ別の平均販売価格が約AED752万(第2四半期)と、他エリアと一線を画す水準です。
日々の利回りよりも、唯一無二のリゾート資産としての価値や長期の資産保有を重視する人に向いたエリアといえます。投資の詳細は専用の記事でも解説しています。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/palm-jumeirah-real-estate-investment/
内陸の新興エリア|将来性を取りにいく価格帯
中心部から離れた内陸には、これから整備が進む新興・開発エリアが広がります。ジュメイラ・ビレッジ・サークル(JVC)やダマック・ラグーンズ、アル・ジャダフ、ドバイ・サウスなどが代表例です。
現在の知名度や利便性では都心に劣るぶん、価格水準は抑えめで、Property Finderの2026年予測ではJVCが約AED115万(第2四半期)と、限られた予算でも検討しやすい水準です。
メトロの延伸や商業施設の開発計画が進むエリアもあり、街の成長そのものを取りにいく選択肢になります。ただし開発計画には実現時期や進捗の不確実性がともなう点には注意が必要です。
エリアを比べるうえでもう一つ知っておきたいのが、供給量です。新規開発が集中するエリア(JVC、ビジネスベイ、ドバイ・サウス、アルジャンなど)は供給圧力から価格が上がりにくく、希少性が価格を支えるエリア(パーム・ジュメイラ、ドバイ・ヒルズ・エステートなど)とは値動きの前提が異なります。
街の特徴・価格帯・供給量の3つをあわせて見ると、エリア選びの判断がしやすくなります。なお、ここで挙げた価格はいずれもポータル事業者による予測値であり、確定した実績ではない点はご留意ください。エリアごとのより詳しい解説は、エリア特集の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/dubai-downtown-marina-jvc/
ドバイ不動産の価格に上乗せされる費用と維持コスト
検討を具体化するうえで欠かせないのが、「表示価格=支払総額ではない」という視点です。ドバイ不動産の購入では、物件価格のほかに登録手数料や各種の実費がかかり、購入後にも維持コストが発生します。ここを見落とすと、資金計画が狂います。
ここでは、上乗せされる費用と維持コストを3つの視点で解説していきます。
登録手数料は売主と買主で折半する
まず押さえておきたいのが、DLDの登録手数料です。多くの記事は「買主が売買価格の4%を負担する」と説明していますが、これは正確ではありません。DLD公式の料金体系(Service Fees)では、売買登録手数料は「売主が売買価格の2%、買主が2%」と定められています。つまり合計4%は、本来は売主と買主の折半なのです。
実務では、買主が4%全額を負担する形で合意する取引も少なくありません。しかし、それは商慣行であって公式のルールではない、という点は知っておく価値があります。「4%は当然買主が全部払うもの」と思い込まず、契約条件として誰がどの割合を負担するのかを確認する——それだけで、あなたの立場は一段強くなります。
仲介手数料や証書発行の実費がかかる
登録手数料のほかにも、名義移転にともなう実費がかかります。DLD公式ベースで確認できる主な費目は、次のとおりです。
- Title Deed(所有権証書)発行:AED250
- 統合地図(Unified Map):AED225/ヴィラ・アパートの地図:AED250
- knowledge fee:AED10/innovation fee:AED10
- サービスパートナー手数料:売買価格50万AED以上でAED4,000+VAT、50万AED未満でAED2,000+VAT(VAT=付加価値税・税率5%)
このほか仲介会社を通す場合は、仲介手数料として一般に売買価格の2%+VATがかかります。ただしこの2%は公式に固定された料率ではなく、あくまで市場の慣行です。仲介手数料の仕組みや内訳は、専用の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/dubairealestate-brokeragecommissions/
保有中はサービスチャージが毎年かかる
購入後も継続的に発生するのが、サービスチャージ(共用部の維持管理費)です。これは購入時の一時費用ではなく、保有している間ずっとかかるランニングコストです。単価は物件やコミュニティごとに異なり、規制当局のRERA(不動産規制庁)が料率を公開しています。具体的な金額は物件によって大きく変わるため、購入前に対象物件のサービスチャージを必ず確認しましょう。利回りを考えるうえでも、この年間コストは欠かせない要素です。
ドバイ不動産の購入に関わる制度と税
価格を判断するうえでは、購入に関わる制度も知っておく必要があります。ここでは購入手続きの流れそのものには立ち入らず、価格や資産価値の判断に効く制度に絞って解説します。購入の具体的な流れは、購入ガイドの記事をご覧ください。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/buying-realestate-dubai/
ここでは、価格判断に効く制度と税を3つの視点で解説していきます。
フリーホールドなら外国人も購入できる
ドバイでは、外国人でも不動産を所有できる「フリーホールド」区域が定められています。フリーホールドとは、所有権を期限なく永久に保有できる区域のことです。日本人を含む外国人が購入・所有できるのは、原則としてこのフリーホールド区域の不動産です。
価格の観点で重要なのは、フリーホールド区域かどうかで、その不動産の流動性(売りやすさ)や価格の形成のされ方が変わる、という点です。購入を検討する際は、対象がフリーホールド区域にあるかを確認しておきましょう。
不動産投資のビザは条件で年数が変わる
ドバイの不動産投資と関連して語られることが多いのが、いわゆるゴールデンビザ(長期居住ビザ)です。ここは誤った情報が出回りやすいため、公式情報で確認します。UAE政府の公式サイト(u.ae)によれば、不動産投資によるゴールデンビザは5年で、最低投資額はAED200万です。10年のビザ枠は、不動産ではなく公共投資(investment in public investments)を対象とするものです。
「AED200万の不動産投資で10年ビザ」と説明する記事も見かけますが、これは正確ではありません。なお、こうした制度は改定されることがあります。実際に取得を検討する際は、必ずUAE政府の公式サイトで最新の条件を確認してください。
保有・売却時の課税は日本と前提が違う
ドバイ(UAE)には、日本のような不動産の保有税や、個人の不動産売却益に対する所得課税が基本的にありません。この税制はドバイ不動産の魅力としてよく語られます。ただし、日本の居住者であれば、ドバイで得た賃料収入や売却益は、日本の税制のもとで課税対象になり得る点を忘れてはいけません。「現地で無税=日本でも無税」ではないのです。
税務の取り扱いは個々の状況によって大きく異なります。本記事は一般的な情報提供であり、税務上の判断は必ず税理士などの専門家にご相談ください。
ドバイ不動産の価格を円換算するときの注意

日本の投資家がドバイ不動産を検討するとき、価格を日本円に置き換えて考えるのは自然なことです。ただし、円換算には見落としやすい注意点が2つあります。為替と、面積の単位です。
1つ目は為替です。本記事では1AED=44.53円(2026年7月30日 00:02 UTC時点/open.er-api.com)を基準にしていますが、為替は日々変動します。AED(ディルハム)は米ドルに固定(ペッグ)されており、1USD=3.6725AEDで安定しています。そのため、円建ての負担は実質的に「円ドル相場」の動きで決まります。
たとえば同じ150万AEDの不動産でも、1AED=44.53円なら約6,680万円ですが、円安が進んで1AED=48円になれば約7,200万円です。物件価格が変わらなくても、購入のタイミング次第で日本円での総額は数百万円単位で動きます。ここでは今後の為替を予測することはしませんが、「円換算の額は動く前提で資金計画を立てる」ことが大切です。
2つ目は面積の単位です。ドバイの物件広告では sq ft(平方フィート)表記が主流ですが、DLDの公式統計は ㎡(平方メートル)表記です。1㎡=約10.764 sq ftなので、単位を揃えずに単価を比べると、約10倍もずれてしまいます。
たとえば「AED1,400/sq ft」を㎡に換算すると、約AED15,070/㎡になります(1,400×10.764≒15,070)。1 sq ftは1㎡より狭いぶん、sq ft単価は㎡単価の約10分の1の数字に見えます。単位を揃えずに数字だけを比べると「10倍の差がある」と誤解しかねないので、単価を比較するときは必ず単位をそろえましょう。競合記事の中には sq ft と ㎡ を混在させたまま数字を並べているものもあるため、ここを意識するだけで混乱を避けられます。
ドバイの不動産価格でよくある質問
平米単価で見れば、長期では上昇しています(2007年比で約3倍)。ただし過去には2010年→2012年、2016年→2020年に調整局面がありました。直近の2026年は、勢い一辺倒だった市場から、買い手が物件を選別する局面へ移りつつあるとされています(Property Finderによる直近の観測)。今後も上がり続けると断定できるものではありません。
平米単価から試算すると、内陸の新興エリアのコンパクトな住戸で、AED115万前後(約5,100万円/1AED=44.53円・2026年7月30日基準)が一つの目安です。ただしこれは単価からの試算であり、実際の売買価格は物件によって変わります。円換算の額も為替で動く点にご注意ください。
過去に2度の調整局面があったことから、価格が下がる可能性はあります。また、供給が多いエリアは価格が上がりにくい構造にあります。ただし、今後の値動きを予測・断定することはできません。下落局面について詳しくは、市場動向の記事をご覧ください。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/dubai-real-estate-market/
「価格」として、平米単価・平均取引価格・売買金額の合計・価格指数という性質の異なる4種類の数字が流通しているためです。値上がり・値下がりを知りたいときは、平米単価を見てください。
DLDの登録手数料が売買価格の4%(公式は売主2%・買主2%の折半)、そのほかTitle Deed発行のAED250などの実費、サービスパートナー手数料としてAED4,000+VAT(売買価格50万AED以上)などがかかります。さらに購入後は、サービスチャージが毎年発生します。
【まとめ】ドバイの不動産価格は平米単価と取引額を分けて読む
最後に、本記事の要点を整理します。
- 価格が上がった・下がったを語る根拠は、平米単価(1㎡あたりの価格)です。
- 取引額(売買金額の合計)は「売れ行きの勢い」であって、価格そのものではありません。
- 平均取引価格は、売れた物件の構成で動くため、単独では判断材料になりません。
- 円換算の額は、必ず為替の基準日とセットで見ます。
- 表示価格には、登録手数料・各種の実費・サービスチャージが上乗せされます。
- 買うときだけでなく、売るとき(出口)の見通しまで含めて総額で判断します。
最後の「出口」について補足すると、DLDの年次レポートでは、住宅ユニットの平均保有期間は60ヶ月(再販済みは67ヶ月)で前年より約1割短くなり、3年未満の短期再販は6倍以上に増えています(DLD Annual Report 2024・p31)。これは短期売買が増えているという事実であって、値上がり益を保証するものではありません。購入時の価格だけでなく、保有中のコストや売却の見通しまで含めて考えることが大切です。収益性(利回り)の詳細は、利回りを解説した記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】https://ddcrest.com/column/dubai-real-estate-yields/
ドバイの不動産価格は、「一つの平均額」で語れるほど単純ではありません。だからこそ、どの数字を見ればよいかの判断軸を持つことが、失敗しない検討の第一歩になります。自分のケースに当てはめて具体的に知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
